孤島の鬼

作:江戸川乱歩
角川文庫ほか
推理小説ですがネタバレで書いてます。未読のかたはご注意ください!

明智探偵でお馴染みの江戸川乱歩先生ですが、この作品に明智小五郎は出てきません。いちおう、素人探偵が出てきますが、その探偵が早々に殺されちゃうというダメっぷり。
以下、あらすじ込みで腐りながら書いています。とんでもなく長いので、ご注意を!これ、どうにも短くできない。

主人公の箕浦金之助くんが、「私」という一人称で、事件を回想しつつ語ってます。この箕浦くん、見た目が可愛いらしく、男にも女にもモテています。特に年上の男性に可愛がられる傾向があったようで、学生時代に下宿先で知り合った諸戸道雄に求愛されます。箕浦くんはノンケなのですが、諸戸が金持ち医学生で美男だったため、「こんなに優秀で高貴な人間に好かれる俺ってすごくない?」と、まんざらでもなさそう。あげくに「友人としては好きだけど・・」という中途半端な生殺し状態に諸戸を置いてます。そんな諸戸の求愛は8年経っても変わることはなく、映画に行ったり、恋文を書いたりと、友人以上・恋人未満な付き合いが続きます。
この時点ですでに、諸戸の愛に涙を禁じ得ません。途中で一度、酔って箕浦くんを押し倒しかけますが、真っ青になって部屋の隅で震える彼を見て未遂。本気すぎる諸戸は、どうしても箕浦くんに無体なことができないのです。あげくに号泣しながら謝罪し「好きでいることだけは許してくれ」。そして、貢ぎ続け、恋文を書き続け・・・もうこれ、BLじゃないです。純愛です。
しかし事態は、箕浦くんに結婚を意識する恋人ができたことで動き始めます。恋人は、同じ会社勤務の木崎初代。諸戸は、「箕浦くんの結婚を阻止したい」という嫉妬心から、初代に熱烈な求婚を開始。この辺から、諸戸の歪んだ愛が感じられますが、初代母の心は動かせても、初代本人の心は動かず、かえって打ちのめされており気の毒。
その初代が密室で殺されてしまいます。犯人は何が目的で、一体どこから侵入したのか?初代の事件を調べていた箕浦の友人で素人探偵「深山木」が、真相を掴んだ様子だったのですが、早々に彼も謎の死を遂げてしまいます。
恋人と友人を続けて失い、犯人もわからず傷心の箕浦くん。そんな彼に「犯人を見つけてみせる」と協力を申し出る諸戸。どこまで愛が深いんでしょうか?小悪魔な箕浦くんは、そんな彼の愛情を知りつつ、頼りきってます。
意外とあっさり犯人は見つかりましたが、殺人を命じた悪玉が犯人を殺して逃げてしまいました。調べていくうちに、初代が殺されたのは、故郷の島にある財宝のありかを書いた手紙をもっていたのが原因であることが判明。しかも、初代の故郷は諸戸と同じ絶海の孤島で、その島に事件の謎を解くカギがあるようです。二度と戻りたくなかったはずの故郷へ、箕浦くんのために同行する諸戸。彼の愛は深い・・
そんなわけで後半から、舞台は絶海の孤島へと移ります。島は諸戸の父・諸戸丈五郎が支配しており、諸戸の実家には大勢の異形者が・・(指が3本しかなかったり、背中が曲がっていたり)。中でも異形の極みといえるのは、シャム双生児のように腰のところで繋がっている男女の双子。美女が腰のところで醜い男と繋がっており、大変に気の毒。医学的に男女のシャム双子はありえないそうで、この双子は人為的に作られたもの。人為的って一体だれが?そうです。諸戸の父・丈五郎が、自分自身が醜いせむしなのを僻んで、あちこちから子供を誘拐してきては異形者に作りかえ、見世物にするため三味線などの芸をを覚えさせながら蔵に幽閉し、時期が来たら見世物小屋へ売り飛ばしていたのです。ひ~~!極悪人!人でなし!しかも、自分以上に醜いせむしの女性を探しだしてきて妻にするほどの僻みっぷり。
諸戸は父と親子喧嘩になり、他の異形者たちと一緒に蔵へ幽閉されてしまいました。諸戸がこんなに尽くしているのに、箕浦くんときたら、双子の片割れである女性に恋心を抱いてます。酷い、酷いよ、箕浦くん。諸戸の目前で彼女と恋におちるなんて・・残酷極まれり。
蔵から逃げ出した諸戸と箕浦くんは、島にある財宝を探しに、洞穴へ。迷わないように、アリアドネの糸ならぬ麻縄を頼りに進みますが、お約束のように麻縄が切れて、迷子になってしまいました。暗闇の中、醜い両親から生まれた自分が呪わしく、幼いころから醜い母親にあんなことやこんなことをされて、女性嫌悪になった経緯を語り始める諸戸。もう、本当に可哀相すぎる。
洞穴に閉じ込められた二人は満ち潮で死にかけ、箕浦くんがパニックを起こしますが、諸戸に抱きしめられて安心し、頬ずりまでしてます。それダメだろ・・・そんなことしたら、諸戸の理性が。思った通り、諸戸の理性が切れて「いまこそ僕の愛を受けて」と、襲いかかってきました。さっきまでは、すり寄っていたくせに、こうなると断固拒絶の箕浦くんです。まんざらでもないのかと思ったら、この子は本気で同性愛はダメみたい。諸戸ってば、どうしてこの子のこと、好きになっちゃったんだろ。報われなさすぎる。「今になっても答えてはくれないのか」と、オイオイ泣きながら追っかけてくる諸戸。可哀相なんだか、怖いんだか、もう
逃げ切れずに捕まってしまい、ハアハア言いながら顔を嘗め回され、これ以上は書けない・・などと回想の箕浦くんは語っております。え~~!それ以上の何があったの?教えてくれ!と思ったら、暗闇の中で邪魔者が出現です!その邪魔者の正体は・・・島の漁師の徳さん!なに邪魔してんの!でも、「俺たちはもうだめだ。助からない」と何もかも吹っ切れた徳さんがいろいろ暴露してくれました。双子の片割れの美女は、初代の妹「緑」であること。諸戸道雄はさらわれてきた子供で、本当の両親が別にいること。とたんに、諸戸から「道雄」に呼び方が文中でも変化してます!乱歩先生、芸が細かい!
その後、九死に一生を得て、財宝をみつけて洞穴から出ることができた二人でしたが、二人とも浦島太郎のように数日で老人化。とくに、箕浦くんの頭は総白髪になっちゃいました。その白髪をみて泣き笑いの道雄。箕浦くんは「死ぬような目にあったしなあ」などと呑気に今でも思っているようですが、違うでしょ。追ってきた道雄が怖かったんでしょ。悲しいかな、道雄のほうは、そのことに気が付いてしまったようです。以前は、結婚阻止のために相手女性に求婚までした道雄なのに、シャム双子を自分のメスで切り離して解放。めでたく普通の美女になった緑さんと、当然のように結婚する箕浦くん。あんたって・・・。しかも緑には財宝(もともと初代と緑の家の隠し財産)が手に入ったので、金持ちの美女と結婚した箕浦くんの立場からすれば大団円です。
でもさあ、道雄はどうなるのよ?本当の両親を見つけて、本当の家族と過ごすことができたようですが・・・なんと、わずか1か月で他界!しかも病死!語り手の箕浦くんは「残念だった」って、わずか一文で終わらせてます!ええ~!ちょっと箕浦くん、彼が何の病で死んだかわかってるの?そこはどうにか、わかってて欲しい。わかってて欲しいけど、箕浦くん、わかってないかも・・・いちおう最後の2行を箕浦君も読んだはずなので、わかってくれてたと思いたい。あまりにも箕浦くん一筋だった道雄の死に際をあらわす2行の文章が、涙なしには読めないです。

乱歩先生は、「同性愛を入れたことで、話を進めるのに邪魔になったりした」などと言っておられたようですが、とんでもごじゃいません!入れてくれて有難うございます!有難うございます!堪能しましたです!

ところで、これを読んで思い出した漫画があります。それは高階良子先生の「ドクターGの島」。この作品が元ネタだったんですね~。少女漫画にするのはキツイと思われたのか、男女を置き換えて描いておられます。これは、少女漫画としては正解だったですね。私も子供心に、グロく切ない漫画として、記憶に残っております。

孤島の鬼
東京創元社
2012-10-25
江戸川 乱歩

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